健康産業の今後 ― HYROXとピックルボールのブームをどう見るか

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最近、周りで「HYROX(ハイロックス)」と「ピックルボール」の名前を聞かない週がありません。ジムに行けば誰かが大会の話をしているし、SNSを開けば誰かが出場しています。私自身もボディメイクをやっている手前、この盛り上がりは肌で感じているところです。

数字を見ても勢いは本物で、ピックルボールの国内競技人口は2026年時点で約33万人、前年比7倍という調査があります。全国の施設数も260を超えました。HYROXも日本展開を本格化させていて、幕張や大阪での大会開催が続いています。

このブームを、私はどう見ているか。今回はそのあたりを、素人なりに整理して書いてみようと思います。

なぜ流行っているのか ― 「一人の時代」の次に来たもの

まず、なぜウケているのか。私の解釈は、「みんなで楽しめる」というコミュニティ性です。

思い返すと、コロナ禍で流行ったものは、筋トレ、サウナ、ランニングと、どれも一人で完結するものでした。人と会えない時期だったので当然です。自分と向き合う時間の価値が見直されて、「ソロ活」という言葉まで定着しました。

その反動が、今来ているのだと思います。人間は共生社会の中で生きている以上、やはり誰かと一緒に何かをやることが根っこで好きなのでしょう。一人でできることを一通りやり尽くした後、次に求めるのは他者と共有する時間だった、という流れです。

HYROXもピックルボールも、この点でぴったり噛み合っています。HYROXはペアやリレーで出られて、終わった後に全員で健闘を称え合う空気がある。ピックルボールはダブルスが基本で、コートが狭いぶん会話しながらプレーできます。しかもどちらも、初心者がいきなり参加しても成立する。ここが大きいと思っています。

テニスにしろマラソンにしろ、ある程度形になるまでは孤独な練習期間があります。その入口のハードルを取り払ったうえで、「みんなで楽しい」を最初から味わえるようにした。よく設計されているな、というのが率直な感想です。

このブームは続くのか ― 私は収束すると思っている

さて、ここからが本題です。この盛り上がりは定着するのか、それとも一過性のトレンドで終わるのか。

私の考えは、トレンドとして収束していく、です。

もちろん競技自体が消えるとは思いません。ただ、今の伸び方のまま定着するとは考えにくい。理由は単純で、今の成長の少なくない部分がマーケティングの力によるものだと感じているからです。

新しいスポーツが広がるとき、初期は「新しい」こと自体が価値になります。話題になるし、写真映えするし、周りがやっているから自分もやってみる。ただ、その勢いが一巡した後に残るのは、結局そのスポーツが持つ本質的な面白さだけです。

その目で見たとき、私は少し引っかかるところがあります。

ピックルボールは、正直なところ、テニスの面白さを超える競技かというと難しいと思っています。ラケットスポーツの中で入口が易しいという長所はあるのですが、それは裏を返せば、上達したときの奥行きがテニスほどではないということでもあります。ハマった人が次に何を目指すのか、その先が見えにくい。

HYROXも同じで、マラソンやトライアスロンの代替として支持されている面が強いと感じます。ただ、屋内で完結する競技である以上、外を走ることの気持ちよさ ― 景色が変わる、風を受ける、季節を感じる ― は構造上どうしても再現できません。天候に左右されない手軽さと引き換えに、失っているものがある。

このあたりが、私が「いつかは落ち着くだろう」と見ている理由です。念のため書いておくと、これは競技を否定したいわけではまったくありません。私自身、機会があればHYROXには出てみたいと思っています。

それでも健康産業に悲観していない理由

ただ、ここで大事なのは、ブームが去ることと市場が終わることはまったく別だという点です。

HYROXやピックルボールが今これだけ支持されているのは、その裏に「健康でいたい」「体を動かしたい」「その時間を誰かと分かち合いたい」という、極めて根深い需要があるからです。この需要は、種目が入れ替わっても消えません。

実際、この20年を振り返るだけでも、ビリーズブートキャンプ、ホットヨガ、ランニング、パーソナルジム、サウナと、主役は何度も交代してきました。そのたびに「ブームが終わった」と言われましたが、健康産業そのものは一貫して大きくなり続けています。器が入れ替わっているだけで、中身の水は減っていません。

だから私は、HYROXとピックルボールの後にも、また別の形をした種目が来ると思っています。次に来るのは、おそらく今回と同じく「一人でも参加でき、初心者でもすぐ楽しめ、終わった後に他者とつながれるもの」でしょう。そこに、そのとき流行っているテクノロジーなり文脈なりが乗ってくる。

個人としてどう捉えるか

これは仕事にも投資にも通じる話だと思っていて、種目に張るのではなく、その裏側の需要に張るという見方が大事なのだと思います。

流行っているスポーツそのものは、数年で入れ替わる可能性がある。一方で、「人は健康でありたい」「人は誰かと過ごしたい」という需要は、少なくとも私が生きている間は変わりません。ビジネスとして向き合うなら、後者の側に立っていたほうが安全です。

もっとも、こういう分析はさておき、目の前で楽しそうにプレーしている人たちを見ていると、単純に「やってみたいな」と思ってしまうわけですが(笑) 流行っているうちに一度体験してみるのも、それはそれで正しい態度なのだと思います。

何か新しい種目を始めた際には、またこのブログで報告します。

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